最高裁判所第二小法廷 昭和43年(あ)429号 決定 1969年5月01日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人紺野稔、同田中仙吉の上告趣意第一点は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(刑法二五九条の「権利、義務ニ関スル他人ノ文書」には、有価証券である小切手も含まれるとした原判断は相当である。)。
同第二点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(刑法二五九条にいわゆる文書を毀棄したというためには、必ずしもこれを有形的に毀損することを要せず、隠匿その他の方法によって、その文書を利用することができない状態におくことをもって足り、その利用を妨げた期間が一時的であると永続的であると、また、犯人に後日返還の意思があったと否とを問わないものと解すべきである。)。
同第三点は、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)